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大阪地方裁判所 昭和43年(わ)744号 判決 1968年6月29日

本籍

大阪府泉南郡熊取町七山一二一二番地

住居

堺市上野芝町四丁五八六番地

医師

本多弘

大正七年三月七日生

右の者に対する所得税法違反被告事件につき当裁判所は検察官豊島時夫出席の上審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

被告人を罰金一千万円に処する

右罰金を完納することができないときは金三万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は堺市上野芝町四丁五八七番地において、上野芝病院を営んでいる医師であるが、所得税を免れようと企図し、公表帳簿上入院診療収入の一部を除外し、架空仕入、架空経費を計上する等の不正行為により所得金額の一部を秘匿したうえ、

第一、昭和三九年度分の所得金額は三三、五四九、六三七円で、これに対する所得税額は一七、七七〇、五五八円にして、うち源泉徴収ずみの税額が六、四六一、三九九円あるから、確定申告すべき税額は一一、三〇九、一〇〇円であるのにかかわらず、前示所得金額中二七、五四四、五三六円を秘匿して昭和四〇年三月一〇日所轄堺税務署において、同署長に対し同年度分の所得金額は六、〇〇五、一〇一円で、これに対する所得税額は二、〇五〇、二七四円であるところ、源泉徴収により六、三九九、三六二円を納付しているから、これが過納分四、三四九、〇八八円につき還付を受くべきである旨、所得金額等を故ら過少に記載した所得税確定申告書を提出しよつてその頃右四、三四九、〇八八円の還付を受けると共に前示確定申告すべき税額一一、三〇九、一〇〇円も、所定の期限を経過するも納付せず、もつて不正行為により、所得税一五、六五八、一八八円を逋脱し

第二、昭和四〇年度分の所得金額は二二、四一八、三三一円で、これに対する所得税額は一〇、九四八、五〇三円にして、うち源泉徴収ずみの税額が七、四二六、一一六円あるから、確定申告すべき税額は三、五二二、三〇〇円であるのにかかわらず、前示所得金額中一七、五一九、八三七円を秘匿して、昭和四一年三月一一日前示堺税務署において、同署長に対し同年度分の所得金額は四、八九八、四九四円で、これに対する所得税額は一、五七一、七〇五円であるところ、源泉徴収により七、三六八、九二一円を納付しているから、これが過納分五、七九七、二一六円につき還付を受くべきである旨所得金額等を故ら過少に記載した所得税確定申告書を提出し、よつてその頃、右五、七九七、二一六円の還付を受けると共に、前示確定申告すべき税額三、五二二、三〇〇円も、所定の期限を経過するも納付せず、もつて不正行為により、所得税九、三一九、五一六円を逋脱、

第三、昭和四一年度分の所得金額は三一、三〇七、九七一円で、これに対する所得税額は一六、二七二、六〇六円にして、うち源泉徴収ずみの税額が七、三四五、〇九六円あるから、確定申告すべき税額は八、九二七、五〇〇円であるのにかかわらず、前示所得金額中二六、四〇二、一一五円を秘匿して昭和四二年三月七日前示税務署において、同署長に対し、同年度分の所得金額は四、九〇五、八五六円で、これに対する所得税額は一、五〇八、六七〇円であるところ、源泉徴収により七、二九二、一四五円を納付しているから、これが過納分五、七八三、四七五円につき還付を受くべきである旨、所得金額等を故ら過少に記載した所得確定申告書を提出し、よつてその頃、右五、七八三、四七五円の還付を受けると共に前示確定申告すべき税額八、九二七、五〇〇円も所定の期限を経過するも納付せず、もつて不正行為により所得税一四、七一〇、九七五円をほ脱したものである。

(証拠の標目)

判示第一の事実につき

一、堺税務署長の証明書(三九年度確定甲告に関する分)

一、杉岡啓司作成の計算書(三九年度分)

一、押収中の元帳(昭和四三年押第三五五号16)、領収証等綴(同号1013)、給料計算台帳(同号8)、源泉徴収簿(同号3)

判示第二の事実につき

一、堺税務署長の証明書(四〇年度確定申告に関する分)

一、杉岡啓司の計算書(四〇年度分)

一、押収中の元帳(昭和四三年押第三五五号17)、社会保険等請求書控(同号5)、領収証等綴(同号1114)、給料計算台帳(同号7)、源泉徴収簿(同号4)

判示第三の事実につき

一、堺税務署長の証明書(昭和四一年度確定申告に関する分)

一、杉岡啓司の計算書(昭和四〇年度分)

一、押収中の元帳(昭和四二年押第三五五号1)、社会保険等請求書控(同号6)、領収証等綴(同号1215)、給料計算台帳(同号2)、源泉徴収簿(同号18)

判示全事実につき

一、中島乙次郎の確認書四通

一、同人の大藤事務官に対する質問てん末書四通及び検察官に対する供述調書

一、本多明子の確認書八通

一、同人の大蔵事務官に対する質問てん末書三通及び検察官に対する供述調書

一、楠千恵子の大蔵事務官に対する質問て末書二通

一、佐々木善次の大蔵事務官に対する質問て末書

一、古谷盛一の大蔵事務官に対する質問て末書

一、岩崎辰雄の大蔵事務官に対する質問て末書

一、庄田裕子の大蔵事務官に対する質問て末書

一、赤松英彦の大蔵事務官に対する質問て末書

一、被告人の大蔵事務官に対する質問て末書四通、確認書及び検察官に対する供述調書

一、押収中の手帳(昭和四三年押第三五五号9)

(法令の適用)

被告人の判示所為中第一の罪は、昭和四〇年法律第三三号附則第三五条により、同法による改正前の所得税法第六九条第一項に第二、第三の罪は各所得税法第二三八条第一項にそれぞれ該当するところ、以上は刑法第四五条前段の合併罪であるから所定刑中いずれも罰金刑を選択したうえ同法第四八条第二項によりその額を合算した金額の範囲内において被告人を罰金一千万円に処し、同法第一八条により右罰金を完納することことができないときは金三万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判官 村上幸太郎)

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